概略
今回インタビューにお応え頂くのは、コンサルティング会社勤務の小元智之さんです。
ワタシノセナカでは、自分と向き合い、本当の自分を受け入れることに苦しみもがくワタシノセナカ世代を「モガリーマン(モガいているサラリーマン)」と命名しました。「モガリーマン」の先輩として、小元さんは過去に自分とどのように向き合い、折り合いをつけて、現在の活躍に至るのでしょうか。そのヒミツに迫ります。
ワタシノセナカとは
「自己肯定感」が低いといわれる日本人。
それでも自身の個性を活かし、第一線で活躍するオトナはたくさんいます。
彼らはどのように自己を肯定し、他者を受け入れ、活躍に結びつけているのでしょうか。
第一線で活躍するオトナに直接インタビューし、その核心に迫ります。
プロフィール
小元智之様
大学卒業後SE職として勤務の後、コンサルタントに転向。現在は財務会計コンサルティングを主軸に複数のプロジェクトに携わる。一方で組織のカウンセリング制度(メンター制度のようなもの)の推進メンバーとして、1on1ミーティングの活性化や個々のカウンセリングのサポートを行う。趣味は学生時代から続けているサックス。現在も定期的にライブ活動を行う。
コンサルティング業務の傍ら、組織のカウンセリング制度の活性化に携わっています
私は現在、組織のカウンセリング制度推進メンバーの一員として活動しています。我々のカウンセリング制度とは、社員一人ひとりが最大限に力を発揮し、活躍の場を拡げられるようサポートする制度です。具体的には管理職以上の役職者が、担当するメンバーの「カウンセラー」となり、日々の業務の悩み相談から評価・長期的なキャリア形成の支援まで、多岐に渡りサポートしています。
というのも、コンサルティング業務の中でメンバーを長期的に育成するためには、普段一緒に仕事するメンバーやプロジェクトの上位者とは別に「キャリアの連続性をサポートする長期的なアドバイザー役」が必要になるからです。
コンサルの仕事は案件ごとにプロジェクトが組まれ、プロジェクト単位で業務に当たります。担当は自分だけという小さいプロジェクトから、自社以外にも複数の企業が関与する千人規模のものまで大小さまざま。期間も2、3ヶ月から年単位のものまでと幅があり、目標をクリアすればプロジェクトは解散となります。
プロジェクト期間の中でメンバー育成を行うことはありますが、長期的な視点でキャリア形成をサポートすることには限界があります。そのため、一人の管理職がカウンセラーとなり数名のメンバーを担当し、配属されたプロジェクト側と連携を取りつつ、メンバーの成長を長期的に見守っています。カウンセラーはメンバーとメールやチャットだけでなく、1on1ミーティングなどを通してコミュニケーションを取ります。
私自身もカウンセラーとして活動すると同時に、組織全体のカウンセリングの活性化のため、数百名のメンバーのカウンセリング状況を外側から確認しつつ、必要なサポートを行っています。
カウンセラーはメンバーに寄り添いつつ、成長に向けて客観的な立場からティーチングやコーチングを行います。私がメンバーに寄り添う際のアプローチ方法は、可能な限り「相手になりきるように思考や心境を想像する」こと。入社時の性格診断結果なども参考にしながら、メンバーが配属されたプロジェクトの中で何を考え、何を感じたかを徹底的にシミュレーションします。
メンバーが悩みを抱えている際は、悩みの根本原因を探るために、シミュレーションで想像した内容から質問を投げかけ、実際には何を考え、感じているか確認します。もともと想像した内容と違いがあればなぜ違ったのか理由を考え、想定を修正、再構築します。
悩みの根本やその背後にある考え方は、本人も自覚できていないことが多々あるので、時には自分以外の管理者にも話を聞いてもらい第三者視点を入れたり、本音の対話を繰り返す中で、本人の気づきを引き出します。
「べき・ねば」が正しいと思い込み、自分を苦しめた過去
「なぜそこまで相手の思考になりきろうとするのか」と不思議に思うかもしれません。その理由は、私自身が「思考のクセ」もしくは「思い込み」に苦しみ、心を病んだ経験があるからです。人の思考には、必ずそう考える「原因」があると思っています。時にはその原因の正体が「思考のクセ」だったりするのです。
「思考のクセ」という言葉を、前回の記事「許せない父親を受け入れることで見つけた本当の自分 | 宮本晋次様 〜自己の個性に気づき、活かすヒント〜」の中に見つけた私は、宮本さんの考えに共感し、今回取材を受けることになりました。「思考のクセ」が生き方に大きく影響することを身をもって知ったから、同じように苦しむ方の参考になるといいなと思います。
30代の頃、私は仕事でうまく行かず、人生で初めて大きな挫折を味わいました。コンサルタントになる前はSE職に就き、SEからコンサルにキャリアチェンジした私は「理想のコンサル像」を抱いていたのです。「コンサルタントはこうでなければいけない」という概念ですね。クライアントの行動変容を促すために論理的でありながら人間力もあり、スマートに問題解決できる人。もちろん仕事の段取りも抜かりなく、全方位的な知見、スキルを完璧に身につけている……
今考えれば全てに精通した完璧な人間はいないのですが、キャリアチェンジしてコンサルになった私は、新卒で叩き上げられた人たちに引け目を感じていたのです。
コンサルタントになってから2-3年目のこと。大規模プロジェクトの1チームのリーダーを任された私は、頑張っても頑張ってもプロジェクトの先が見えず、心因性の過敏性腸症候群を患いました。
会社で利用できる臨床心理士のカウンセリングを受けると、「『思考のクセ』(認知の歪み)があなた自身を苦しめているのかもしれません」とカウンセラーは言いました。
「トラブルが起きた時に、あなたは『自分のせいだ』と思う傾向にあるようです。そのトラブルは、果たしてあなた一人の力でどうにか解決できた問題だったでしょうか?」
その時、「自分一人で全て背負おうとしていたけれど、私一人の力ではどうにもならないこともあったな」と気づきました。「あなたはその問題を解決しようと頑張りました。でもそもそも、あなた一人の力ではどうにかなる問題ではなかったのではありませんか」。
私の中には自分自身の力で「完璧にやらねばならない」という概念が根を張っていたのです。「べき・ねば」の概念ですね。「うまくできて当たり前」という環境で育った私は、「うまくやれば褒められる」ことが成功体験として刷り込まれていました。
学生時代は苦しさを感じたことはありませんでした。学校の勉強は範囲も決まっているし、評価基準も○か×と明確です。努力した結果が成績に直結するので、学生時代の私には「努力した分だけうまくいく」という方程式がフィットしたようでした。しかし、正解や不正解といった単純な話ではないビジネスやコンサルティングの世界では、学生時代の成功体験からすり抜けた問題が明るみになってしまいました。
その時に一番苦しかったこと。それは、「うまくできない自分」や「自分の弱さ」を認めることでした。自分ができないことに真正面から向き合うことが辛かった。できない自分を認めることが苦しかった。私にとって、人生で恐らく初めての挫折です。
常に理想像に向けて努力してきた私にとって、等身大の自分と向き合うことは痛みを伴う苦しい作業なのだと、その時初めて知りました。
それから私は、自分ができること、できないことを棚卸しする作業にとりかかりました。上位者が私を評価した内容と自分ができていること、できていないことをすり合わせる作業です。それまでは自分の現在地を見誤り、もっと高いところにいるはずだと勘違いしていました。そのギャップのせいで、本当はできないのにできるつもりで行動し、結果失敗して苦しむことに気づいたのです。
一度冷静に「自分は今、ここにいる」と立ち位置を見極めることで、初めて「今の自分にはここが足りないから努力しよう。もしくは他の対策を取ろう」と対処できるようになりました。
私にとって当時課題であった「論理的思考力」。コンサルタントとして日々「論理的思考力」を鍛えようと努力した結果、課題解決能力が上がり、気づくと冷静に判断できるように変化していました。
人に頼めるようになった。「できない」と言えるようになった
自分の現在の位置を「スタート地点」と捉えるようになってから、大きな変化が二つありました。人を頼ることができるようになったこと、「できません」と言えるようになったことです。
臨床心理士にサポートを受けてから数年後、また同じような課題にぶつかりました。問題は徐々に大きくなり、このままではクライアントに迷惑がかかる、自分一人ではどうにでもできない状況に陥ったとき。
「私一人では解決できません。助けてください」
意を決して私は上位者に頼りました。「怒られるかもしれない。評価が下がるかもしれない」不安が頭をよぎります。そんな不安とは裏腹に、上位者はすぐに状況を整理し、収束に向けヘルプに入ってくれたのです。結果クライアントには少し迷惑をかけましたが、稼働も延期することなく完了。上位者は優先順位を明確にし、私ができていないことを冷静に指摘しました。後には「完璧に見える上位者だって、過去にはプロジェクトで苦労したし、助けられた経験があるんだよ」と助言をくれました。
「自分一人で解決しようともがいたけれど、最優先するのはクライアントの成功だ。そのために、時には人に頼ってもいいんだ」とその時理解しましたね。
それでもやはり悔しさは残ったので、これを見習い次はもっとうまくやろうと誓ったのです。
自身のウィークポイントが明確になり、それ以降は本を読んだり研修を受けたり日々ブラッシュアップしています。そんな私にもまだ力及ばないことはありますが、人に頼る、さらには、人を頼ってもできないことは「できません」と言えるようになったのは大きな変化です。
以前は「できない」と伝えることはコンサルとしてもっての他だとすべて引き受け、逡巡しました。しかしお客様を守るため、メンバーを守るために「できない」と伝えることも必要だと気づいたのです。「今は難しいけれど、少し時期をずらしてやってみましょう」と代替案を提案することもあります。先手を打って判断・行動できるようになり、心に余裕が生まれましたね。
1on1ミーティングの中で気づいた、誰もが持つ「思考のクセ」とその影響力の大きさ
過去に挫折した経験から「思考のクセ」の影響力がいかに大きいかを思い知った私。その後カウンセラーとして1on1ミーティングを行う中で、相談者が自身の「思考のクセ」に気づき、自身の姿勢や行動に変化を起こすキッカケとなった事例をここでご紹介します。
私が担当していた相談者の20代男性Aさんは、仕事で心が疲れ休職し、一度復職したけれどまた休職してしまいました。2回目の休職には私のケアも足りなかったのではと後悔し、アプローチ法を特に意識するよう心がけました。同時に、本人が自分自身と向き合うことができるよう取り組んだのです。「認めたくない真実と向き合う」ことは、痛みを伴う作業です。しかしそれを乗り越えなければ、また同じ状況に陥った時に解決できず立ち止まってしまう。カウンセラーとして、共に痛みを伴いながらサポートするよう心がけました。
Aさんは頑張り屋で責任感が強く、自分で何でもやり切ろうと努力する人。外部の臨床心理士とのカウンセリングでも、完璧主義的な傾向があるという結果が出ていました。
コンサルタントという職種は、経験の浅いうちから本人の力量より負荷のかかる仕事を任されます。できない部分は上位者から指摘が入り、初期の頃はいっぱいいっぱいに感じることも。
たびたび指摘を受ける中で、Aさんは自分が否定されていると感じ、自信を失っていきました。一方プロジェクトの上位者から話を聞くと、Aさんは十分に能力があるのでぜひ成長してほしく、Aさんへの指摘内容もAさんを否定するものではありませんでした。
当時のAさんには、「ちゃんとできなければいけない」という「思考のクセ」が根をはっていたのです。責任感が強く完璧にこなさなければと頑張るAさんは「指摘されること」=「完璧ではないから」と、自分自身を否定し苦しめていました。
私とのカウンセリングの中では、Aさんが上位者から受けた指摘をひとつずつ棚卸しする作業を行いました。
指摘内容を挙げ、それに対してAさんが感じたことを話してもらう。一方で第三者目線で指摘内容を聞くと、単に「指摘」であり「否定」ではないのでは?
この問答を繰り返すうち、Aさんは「指摘」を冷静に捉える感覚を身に付けていきました。
少し冷静に考えられるようになったころ、Aさんは「新たな思考のクセ」の壁にぶつかります。「『考える』ことは苦しい行為だ」という「思考のクセ」です。
今後のキャリア形成について話しはじめると、Aさんは「私はクライアントの課題解決にあまり興味が持てないのです…」ときりだしたのです。
「課題解決」はコンサルにとって本分ともいえる業務。ここに興味が持てないのは正直厳しいなと思いつつ、「それでもこの職に就いたのだから、本人も気づいていない思いがあるはずだ」と私は考えました。
複数回にわたるAさんとのカウンセリングからは、なかなか突破口を見出すことができません。そこで別のカウンセラーによるカウンセリングをAさんに受けてもらい、新たな解決策を見出そうと試みました。
数日後、そのカウンセリングの感想を聞くと、Aさんはこう答えるのです。
「カウンセラーが『私はクライアントのために悩んだり考えたりすることが好きで、その結果クライアントの役に立てると嬉しいですよ』と言ったとき、私も共感できる部分があるなと感じました。確かに、悩んだ結果しっくり来たときは楽しいな、と思ったんです」。
あれ。Aさんはクライアントの課題解決に興味が持てないと言っていたのに矛盾が生じているようだ。
そこで私は、Aさんが「考える」ことをどう捉えているのか知りたく、「考える」ことに対し思いつくワードを並べてみようと提案しました。
すると、想定通りではありましたが「苦しい」「しんどい」といったネガティブなワードがズラリと並んだのです。
これではコンサルタントとして仕事をするのは辛いはず。
「考える」ことに恐れを感じるAさんに、次のような対話をしてみました。
「考える、という言葉自体はポジティブでもネガティブでもなく、ただの動詞だと思うんだ。もう少しフラットにみたときに、Aさんの今までの経験で、考え抜いた結果うまくいったこともあったのでは?」
「難しい課題だからこそ、考えて解決したときに『気持ちいい!』と感じることもありました。考え抜いて出した結論をクライアントに提示し、よい方向に向かうことは嬉しいです。」
「そうだよね。考えるという行動の先に紐づけてくれた『悩む』という行動にはネガティブなイメージがあるけれど、『考える』の先に書いてくれた『解決すると気持ちいい』という思いも本心だよね?」
「確かに、考えすぎて『逡巡して』しまうことはマイナスに捉えていましたが、実は考えること自体は好きでやっていたのかもしれません。」
「いいね!発見だね!『逡巡して』解決策が出てこないのはしんどいね。『逡巡する』ではなく『考える』ためにはどうしたらよいだろう?」
「『考える』→『整理をする』でしょうか。」
「いいね。『整理をする』ということをさらに落とし込むとどういうことだろう?」
「前提知識をつけるとか?それがないと整理ができないので。あとは、わかりやすく組み立てる、でしょうか。」
「そうだね。ではわかりやすく組み立てるにはどうしたらいい?」
「構成を考えること。また伝え方も大事だと思います。」
「だいぶクリアになってきたね。ここまでの内容を整理すると、クライアントのために考えたり悩んだりすることは必ずしもAさんにとってネガティブなことではなく、考えをうまく整理できれば、より一層解決できることが増えて、気持ちいい、嬉しいが増えるということかな?」
「そうですね。そう思います。」
「改めて書き起こした図をみてみて、『考える』ことに対してどう思う?どう感じる?100%素直に、心から感じたことをそのまま言葉にすると?」
「『悩み』に対してネガティブな感情を抱いていましたが、長期的な視野でみれば、成長に繋がったり楽しかったのかもしれません。」
「すごい発見をしたね!」
「……」
Aさんはやや高揚した表情で、しばらく言葉を失っていました。
「この内容を自分でもさらに考えてみます。」
「うん。あらためて咀嚼してみるといいと思う。さらに『整理をする』ために必要なスキル、ロジカルシンキングは鍛える必要があると思うから、それについてはまた次回。目指す目的地と現在地との距離を埋めるために、行動プランに落とし込んでみようか?」
「わかりました。よろしくお願いします。」
その後、Aさんからは「ちょっと道が開けたかもしれません」とコメントをもらいました。私もAさんの変化を表情や言葉から感じることができて、嬉しい経験でした。
自己との折り合いにもがく「モガリーマン」たちへ。自分の感情と上手に付き合えるようになろう
今、自分と向き合うことに苦しみ、もがいている「モガリーマン」のみなさまへ。
もがいてください。もがいてもがいて、ご自身と向き合って、答えを見つけてください。
ただし、もがき方のコツは知っておいた方がいいと思います。さらには、自分一人でもがき続けても答えが見つからないこともあるので、人に相談することも選択肢としてもっておくことをおすすめします。
自分では、自分という人間をなかなか知ることができません。人と接することで、人から教えてもらうことで、自分が少しづつ見えてくるものです。私の場合は「思考のクセ」に長年とらわれ、自分を冷静に見極めることができませんでした。臨床心理士とのカウンセリングによって気づきが得られ、自分という人間が理解できるようになり今に至ります。
臨床心理士にアドバイスされたことでもう一つ、印象に残っていることがあります。
それは、「自分の感情を鵜呑みにしない」ということです。
私は「心とは神聖不可侵でとてもピュアな領域なのだ」と思っていたのですが、そんなこともないのですよ、と。
感情とはどのように生まれるのでしょうか。
ある出来事が起きると、視覚や聴覚など五感がそれをキャッチし、体が反応します。たとえば「鳥肌が立つ」という反応が起きると、「以前もこんなことがあったぞ。これは危険だ!」と脳が解釈を加えた結果、感情は生まれると本で読んだことがあります。つまり、感情とは無条件に湧き上がるのではなく、脳が解釈したアウトプットなのです。同じ状態に陥っても、脳がどのように解釈するかによって湧き上がる感情は違うのです。
「感情が湧き上がった時、本当にそうかな?と念を推して、もう一度咀嚼してみてください」
臨床心理士はいいました。例えばネガティブな感情に支配されていると、電話が鳴っただけでもビクッとしてしまう。「電話=嫌なことを言われる」と思い込んでいるからです。でも電話が鳴るのは単なる事象に過ぎず、「嫌なことを言われる」と脳が勝手に解釈しただけ。その脳の解釈をいったん疑うのです。電話の内容はいい話かもしれないし、単に勧誘かもしれない。起こった事象を客観的に判断する、感情のとらえ方の一つのアプローチ法ですね。私の場合はそのように考えることで、自身の感情と冷静に向き合えるようになりました。
そうはいっても、ネガティブな感情がワッと湧くことは今でもありますよ。そんな時は「この状況を一番うまく解決できそうな〇〇さんはどのように考えるか?」と想像します。「解決策を真っ先に考えるだろうな。これとこれをやれば解決に向かうはずだ」と。湧き上がったネガティブな感情を受け止めはするけれど、「別のとらえ方もあるかもしれないね」と感情に声をかけてあげるイメージです。
自分の感情と折り合いをつける方法はさまざまあり、「感情を断ち切る」アプローチ法もありますが、私はこれをやって失敗しました。家族に辛い出来事が起こった時、「私は一家の主として家族を支えなければならない」と、感情を断ち切るような対応を取ったことがあったのです。しかし、そのアプローチ法は自分をおかしくしてしまうことがわかりました。これは危険だ、やめよう、と判断。結果、私に向いているアプローチ法を理解しました。
湧き上がった感情を否定しない。感情を素直に受け入れ、一方で流されないように感情に声をかけてあげる。そうすることで私の感情は落ち着きました。いまは時間をかけて、自分の感情と向き合うことを心がけています。
人間、一人では決して生きていけません。一人で全てを抱え込む必要はなく、時には人に頼っていいのです。そして、人に頼ってもいいんだと知った時から、同じように苦しむ人を助けてあげられるようになります。そうすれば自然と人に感謝することが増えていくように思います。
最後に、私がとても共感した宇多田ヒカルさんの歌、「PINK BLOOD」の歌詞の一部を紹介します。
「若いころは『人の評価』が『自分の価値』になってしまいがち。でも大人になるにつれ、自分自身とちゃんと向き合わなければいけない。自分を知って『本当の自分の価値』に気づいて、自分に自信を持っていいんだよ」と背中を押してくれるような「自己肯定感応援ソング」だと思っています。
人は大人になったら「自分の価値」に気づき、その価値を最大限に生かし生きていくべきだと私は思っています。そうすれば世の中はどんどんよくなる。人に何を言われても、結局は自分が自分のことを「いいんだよ」と受け入れてあげなければ、本当の意味で癒しにはなりません。
年を重ねて私自身がじっくり自分と向き合う中で、共感できるメッセージがこの歌に込められていました。
私の経験が、自分を受け入れられずに悩む人たちのなんらかの役に立てば幸いです。
~編集後記~
今回小元さんにインタビューをする中で面白かったお話があります。
それは、過去のショックだった出来事に類似したシーンに遭遇しそうになると、過去と同様に悪いことが起こるのではないかということが頭を過ぎる、いわゆる「フラッシュバック」との付き合い方について。思考のクセに気付けるようになると、「また悪いことが起こると不安になってるね、自分」という風に客観的に自分を見られるようになり、だんだんうまくかわせるようになるのだとか。
小元さんを見ていると、ご自身をもう一人の自分が観察できるその根源は、ご自身への興味・関心の強さなのではないかと感じました。そして、「自分が一番自分に興味がある」というのはオトナノセナカが目指したい、本来ありたい人間の姿だなとも改めて感じた次第です。
- 企画者(メイン)
- 事務局メンバー 柳橋 歩(1児の男の子のパパ)
- 企画者(サブ)
- 事務局メンバー 為近 真也(女の子の双子の新米パパ)
- 取材ライター(インタビューワー)
- 長島綾子(1児の女の子のママ)